酒銘: 越乃寒梅
(こしのかんばい)
蔵元: 石本酒造
(新潟市江南区北山
創業: 明治40年(1907年)
越乃寒梅(こしのかんばい)は新潟県亀田郷の石本酒造の手になる銘酒であり、およそ日本酒を愛する人にして、越乃寒梅を知らぬ人はあるまいと思う。
「越(こし)」とは、
越前(福井県北東部と石川県)、
越中(富山)、
越後(新潟)
の三越(さんえつ)を合わせた国の名乗りである。
越前、越中、越後と聞いて思うのは、雪深い冬景色であろう。
越(こし)の国は、まことに長い冬に閉ざされて、春を待ちかねる思いの深い国である。
日本語には、一音一音に意味がある。
コシのコは、籠もるという意味がある。
コシのシは、一点に凝縮する力を表す。
越(コシ)という名乗りには、長い冬を籠もり、籠もり、籠もり続けて、力を凝縮し、凝縮し、凝縮し、やがて爆発の時を待つという国振りが窺える
越の国人(くにびと)は、越の国ぶりを受けて、まことに忍耐強く冬を耐え抜く。
豆腐作りの職人さんで一番多いのは、越中富山の出身者とか。夜明け前に起き出でて、冷水に両手を浸して豆腐作りにいそしむ越(こし)の国人の姿がそこにある。
酒もまた、越の国振りを受けて、その厳寒を耐え抜くことによって、芳醇なる薫りを醸し出すようになる。
その越(こし)の国振りを見事に表すのが、「寒梅(かんばい)」である。
春きにけらし春よ春 まだ白雪の積れども 若菜の萌えて色青き ここちこそすれ 砂の上(へ)に
(島崎藤村『若菜集』草枕 より)
花は桜と浮かれる前に、まだ根雪も溶けやらぬ早春に、いち早く蕾みをつけて花開かせる、その生命力は、まさに越(こし)の国振りそのものではないか。
その厳寒に耐えて、自らを鍛え鍛えた末に、あらゆる花に先駆けてかぐわしい薫りをもたらす「寒梅」こそ、同じく厳寒に耐えて酒造りする杜氏たちと心通わせて発酵する酵母菌たちと志を同じくするもの。
酒は、生き物である。
生き物は、鍛えられて初めて、その力を存分に発揮することができる。
「越乃寒梅」こそ、日本酒という生き物の凛然たる気品を表す名乗りではないか。
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★ 酒蔵から流れる日本文化紹介 ★ 昌原(あけはら)容成 ★ ********************************************************
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