「花美蔵」酒買いの儀式の酒は十三文-岐阜県-日本酒と日本文化
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「花美蔵」酒買いの儀式の酒は十三文(岐阜県の酒)
酒銘: 花美蔵(はなみくら)
蔵元: 白扇酒造(岐阜県加茂郡八百津町)
創業: 江戸時代後期
「花美蔵(はなみくら)」とは、何とも美しい銘柄ではないか。日本人の花を愛する心、花見に浮かれる心を、そっくり集めて日本酒の「蔵」にかぶせる。
「花美蔵」の蔵元は、江戸時代後期から続く白扇酒造という。
白扇は単なる実用品ではない
日本人にとって、日本文化にとって、扇という物は単なる実用品ではない。
つまり、広げて風を起こして涼を取るということに限定される物ではない。
舞扇は、日本舞踊に必須のアイテムであり、茶道においても扇を前に置いて礼をする作法がある。
神祭りにおいては、美剣(みつるぎ)を振ることがある。
美剣(みつるぎ)なき場合は、白扇をもってこれに変えるということがある。
那須与一と扇の逸話
源平合戦の際には、屋島の戦いに置いて、有名な那須与一(なすのよいち)の逸話がある。
平家が波に揺られる小舟の上に扇を立てて、これを射てみよといってからかったのに対して、義経の命をうけた与一は、見事その扇を打ち落とした。
ところで、与一とは、十に与(あま)り一、ということであり、十一男(十一番目の男子)に良くつけられた名前である。では、「切られ与三郎」とは、十三番目の子であったのか。昔はよほど子沢山が多かったとみえる。
花美蔵の酒買いの儀式
さて、毎年春先に、決まって十二文を出して酒を買いに来て、決まって断られるというひょうきん者がいる。それも江戸時代から・・・。
江戸時代から続くというその「酒買い」は、白扇酒造と地元の太部古天神社(たべこてんじんじゃ)との間で行われる、年に一度の恒例の行事である。花見の頃に、「花美蔵」を買いたいというひょうきん者の気持ちは分からぬでもない。
沛王(はいおう、漢の高祖)の面を被った男が、早朝、三升徳利を下げて白扇酒造を訪れ、十二文を差し出して「酒をくれ」という。
白扇の主人は「一文たらんから酒は売れん」と応える。
「そんな筈はない もう一度勘定しろ」
「・・(しようがないな)・・よし、それでは酒を売ろう」
主人が徳利に八分目ほど酒を満たして渡すと、沛王は徳利に指を入れて量を確かめる。
「指が濡れない、もっと入れろ」
こういうユーモラスなやりとりを、江戸時代から今日まで、毎年繰り返している。
こういう祭事が残っていることから観ると、昔は酒三升が十三文であったのだろうか。
ご存じの方がおられたら、ご教示願いたいものである。
それにしても、地元の産土神社と酒の蔵元との間で、春の花見の頃の祭事を連綿とつたえているという、この土地の風土と人々とに敬意を表したいと思う。日本文化伝承の有り難い一こまである。そういう日本人の心が「花美蔵」という美しい銘柄に籠められている。
昨今の食品業界の不祥事を思い、少し日本人の心根がぐらついていることに危惧を覚えていたのだが、いやいや、どうして、日本人の心根は、そう簡単には腐るものではない。
日本全国に酒造りに精進なさる方々が、日本の国土と共に生き続けているということを、この「酒買い」の儀式に、また「花美蔵」という銘柄に窺うことができる。
来年春は、帯に白扇をさして、「花美蔵(はなみくら)」下げて花見に出かけるとするか。
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